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海外・国内留学体験記 Study Experience

written by Ota

大学院生1年目の太田義明です。
現在(2019/9)University of MichiganにResearcherとして留学しています。2020/7から正式のClinical FellowとしてNeuroradiology divisionで臨床を始める予定です。現在はそれに向けて英語の上達、Reading Skillの上達、数あるConferenceの準備や、研究などをこちらで行なっています。とても大変ですが毎日生き生きと過ごせています。
ここにまずどのようにしてECFMG(米国で臨床を行うための資格)を取得したかを同じ目標を持つ者のために書いておこうと思い、このような機会を山田惠教授にいただきました。

まずECFMGを手に入れるためにはUSMLE(United States Medical licensing Examinationの略)の全てのStepを合格する必要があります。Step1(基礎医学)、Step2CK(臨床医学)、Step2CS(OSCE)とあり、さらにStep3(Clinical basedの医学的知識を問う試験)に合格する必要があります。Residencyから始める人は全てで高得点を取得する必要があります。周りではResidencyから放射線科に入れた人は聞いたことがないのでとてもハードルが高いものと想像します。これらの試験にどのようにして合格したか個人の体験を元に書かせていただきます。

臨床留学を志したのは研修医1年目の10月でした。千葉県のとある病院で初期研修を始めて、半年が経ち、臨床での動き方や疾患の臨床推論、抗生剤の使用、適切な点滴のオーダーや、救急で手技がある程度できるようになった頃に普段していることに物足りなさを感じ出しました。もっと研修医期間中にできることはないか、今後の医師人生に生きることを今のうちに出来ないかと考え出しました。そんな時、医局にあったERというドラマを見た時、このようなDiversityのある環境で働きたいと思うようになり、研修中にUSMLEを全て突破することが目標になりました。受かるかどうかなど一切考えずに始めたのを覚えています。学生ではないのでやはり、まとまった時間はとれず、当直中の隙間時間や仕事が始まる前の時間を利用して勉強していました。Step1,Step2CKの試験はcomputer-basedで単に知識を叩き込むだけです。各step4000問を解いて全て覚えれば受かると当時言われており、全て暗記するように心がけました。そこまで英語が得意ではなく(今でも得意ではありません)、毎日とても辛かった記憶があります。特に基礎医学に関しては学生中にあまり勉強しなかったため、理解するのに一苦労でした。諦めたらどれほど楽だろうかと考えたこともありましたが性格上できませんでした。10ヶ月でStep1、5ヶ月でStep2CKを運良く合格出来ました。今では多くの対策本やアプリが出現し比較的取り組みやすくなっていますがその分最低合格点も上がっています。これから試験を受けようとしている方がいれば連絡いただけばもっと詳細に伝えられると思います。

研修中に取得できなかったStep2CSは放射線科を専攻してから12ヶ月で取得できました。この試験は実際に患者さんを制限時間内に、適切な振る舞いや表現を使って診察し、適切な説明や検査のオーダーをし、電子カルテを仕上げる必要があります。1日で12人を診察するため試験時間は朝7時半から17時までかかる大掛かりなものです。また受験はアメリカ国内の限られた場所でしか受験できません。英会話能力など皆無であった僕にはとてもハードルが高いものでした。この試験も隙間時間や朝業務前、業務後にない時間を無理やり作ってした記憶があります。Total 2年半かかりましたがHigh Scoreとは言えないながらも無事全て一発で突破できECFMGを取得できました。

英会話に関しては京都に帰ってからも朝の1時間、夜寝る前の1時間をなるべく欠かさずしてきました。言語センスは皆無でしたが続けていると何となく聞こえるようになり、話せることが徐々に増えてきました。続けることが大事です。やめてしまえばすぐに元に戻ってしまいます。今でも得意とは言えず聞こえないことだらけです。帰国子女でもない限り、毎日毎日コツコツ少しでも続けることが肝要です。
当然、周りからはそんなことに勉強する時間があるのであればもっと臨床や読影の勉強をしたらと言われることもありましたがそのような声は耳には入りませんでした。見ている将来が違うのであれば働き方や取り組んでいることが違って当然だと思います。画一的ではなく、もっと働き方、考え方にDiversityがあっていいと思います。自由に目標や夢を持つことは認められるべきだと思います。僕の場合は理解者の存在にとても恵まれました。中でも山田惠教授には感謝しても仕切れません。今ここで学べていることは自分の能力からではなく、出会いや機会によって得られたものだと感じています。こちらでどれだけ自分ができるかわかりませんが精一杯日々精進していきます。

まだ臨床留学について述べていないStep3受験、University of MichiganとIowa UniversityとのInterviewや米国でのプレゼンなど機会を頂ければ書かせていただきたいと思います。